注意欠陥・多動性障害(ADHD)を疑う学生や研修医に出会った時の対応について同僚と話し合いました。何度説明しても理解してくれない学生はADHDの可能性があります。
ADHDは努力不足や性格の問題、怠けではありません。脳の実行機能(計画・時間管理・整理)の特性です。ですから、教育のポイントは「叱責」ではなく、「環境調整」です。
有病率は小児では約5%、成人では約2.5%くらいです。クラスに1人はADHDの生徒がいます。遺伝率は70–80%です。ADHDの症状は退屈な作業で悪化しますが、興味のあることには驚くほど集中できます。
① まず「困りごと」を丁寧に聞く
ADHDの学生は提出期限を忘れる、複数課題で混乱する、実習準備を忘れる、集中が続かないなどの問題が起きます。
この時「どうしてできないの?」ではなく、「どこで困っているのか?」を聞きます。具体的にはレポートの締切、実習準備、ノート整理、学習方法を一緒に確認します。
② 「一度に一つ」の学習にする
ADHDの人はマルチタスクが苦手です。指導はレポートと実習準備、テスト勉強を同時に指示するのではなく、「今日はこれだけやりましょう」と課題を一つずつ提示します。
③ 課題を細かく分ける
ADHD生徒は大きな課題が苦手です。例えば、レポート作成では、1)文献を探す、2)目次を書く、3)イントロを書く、4)本文を書く、5)まとめを書くというように、小さなステップに分けます。
④ 「見える化」を徹底する
ADHD支援で最も有効な方法です。ToDoリストやホワイトボード、スマホリマインダー、カレンダーを活用し、「今日行うべき3つのこと」を書かせるとよいです。
⑤ 集中環境を整える
ADHDでは環境の影響が非常に大きいです。例えば、図書館で勉強したり、スマホを遠ざける、静かな場所での勉強などの工夫が有効です。
⑥ 学習方法を一緒に考える
「どこで勉強している?」「何分くらい集中できる?」「ノートの取り方は?」と質問します。ADHDの人では努力ではなく方法が合っていないことが多いです。25分集中して5分休むというセッションを繰り返す「ポモドーロ・テクニック」は有効です。
⑦ 睡眠を必ず確認する
学生や研修医では夜型やスマホ依存による睡眠不足が多いです。就寝時間と起床時間、スマホ時間を確認することは重要です。
⑧ 自己肯定感を守る
ADHDの人は、「努力不足」、「怠けている」と言われ続け自己評価が低くなりやすいです。 教師としては、「あなたの努力が足りないわけではありません」、「方法を変えると必ずできるようになります」と応援します。
⑨ 必要なら医療につなぐ
日常生活に支障が大きい場合は、心療内科や発達外来への紹介を検討します。 薬物療法には、メチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシンなどがあります。
⑩ 教育者として一番大切なこと
ADHDの特性を持つ人は、人の痛みに敏感、共感力が高いことが多いです。患者さんが求めているのは完璧な医療従事者ではなく、自分の苦しさを理解してくれる医療従事者です。
ADHD学生に対して教師がすべきことは矯正ではなく、理解と環境調整です。教師が学習環境や課題構造、声かけを少し変えるだけで学生の能力は大きく発揮されます。