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八ヶ岳から吹く風 PART 2

八ヶ岳のふもとにある諏訪中央病院で地域医療と若手医師教育を行なっています。医学生や一般の方にもわかりやすく正しい医学情報を発信したいと思います。名古屋の大同病院、会津の福島県立医科大学会津医療センター、郡山の太田西ノ内病院と総合南東北病院でも医学生&研修医教育の機会をいただいています。

子供とスマホ

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「子どもが何歳になったら、スマホを持たせるべきか」

夕方、塾帰りの子どもが、ポケットからスマートフォンを取り出して「今から帰るね」と母親に連絡する。今では、ごく当たり前の光景になりました。

スマートフォンは、子どもたちにとっても、そして親にとっても、安心と便利をもたらす道具です。友人との連絡は簡単になり、孤独は少しだけ軽くなります。登下校や習い事の行き帰りには、位置情報で安全を確認することもできます。それは確かに、現代における「見守り」の新しい形です。

しかし、その一方で、こうした声もあります。「子どもにスマホを持たせることは、タバコのような害があるのではないか」と。

極端に聞こえるかもしれません。けれども、その背景には確かな理由があります。近年の研究では、スマートフォンの使用、とくに「問題のある使い方」が、子どもの生活の質を低下させることが繰り返し示されています。

睡眠は浅くなり、気分は落ち込み、家族との会話は減り、学校生活にも影を落とします。さらに驚くべきことに、「持っているだけ」で、抑うつや睡眠不足のリスクが上がる可能性があるとも指摘されています 。

スマホは便利ですが、子どもの健康・生活の質に明確なリスクがあります。特に早く持たせるほどリスクが高くなる可能性があります。

子どもにスマホを持たせるべきか、それとも持たせるべきではないのか。答えは単純ではありません。大切なことは、「いつ、どのように使わせるか」という視点です。

子どもという存在は、まだ自分をコントロールする力が十分ではありません。そこに、無限に広がる刺激の世界――スマートフォンが与えられると、どうなるでしょうか。夜更かしをし、運動は減り、画面の中の世界に引き込まれていく。それは、子ども自身の弱さではなく、発達の途中にある自然な姿なのです。

だからこそ、私たち大人が「枠」をつくる必要があります。

・夜間は使わない

・使用時間を決める

・何に使っているかを、親が一緒に確認する

現代は、効率よく、短時間で必要な知識を得ることが好まれる時代です。スマートフォンは、その象徴のような存在です。しかし私は、少し懐疑的です。

一見すると役に立たないような知識や、遠回りに見える経験、本の中で出会う物語や、誰かとの何気ない会話――そうしたものこそが、人間の深みを育てていきます。

スマートフォンは便利です。けれども、それだけで世界を知ることはできません。子どもたちには、どうか「画面の外にある広い世界」にも触れてほしいと思います。

スマートフォンを持たせる年齢に、正解はありません。

子どもの成長を支えるのは、スマホをどう使わせ、どう管理するかです。

参考文献

  • Pediatrics. 2026 Jan 1;157(1):e2025072941. PMID: 41324306
  • Acta Paediatr. 2020 Dec 22;110(5):1417–1424. PMID: 33305437