Site cover image

Site icon image 八ヶ岳から吹く風 PART 2

八ヶ岳のふもとにある諏訪中央病院で地域医療と若手医師教育を行なっています。医学生や一般の方にもわかりやすく正しい医学情報を発信したいと思います。名古屋の大同病院、会津の福島県立医科大学会津医療センター、郡山の太田西ノ内病院と総合南東北病院でも医学生&研修医教育の機会をいただいています。

フレイル

Image in a image block

看護学生の皆さんへ

八ヶ岳の峰に残る雪も、いつしか薄くなり、やわらかな春の光が山肌をそっと撫でる季節となりました。

「フレイル」という言葉を、最近よく耳にするようになりましたね。

フレイルとは、年を重ねるなかで、体・心・社会とのつながりを支える力(予備力)が、少しずつ弱くなっていく状態のことを指します。

風邪をひく、転ぶ、薬が変わる、入院する。そんな一見ささやかな出来事をきっかけに、急に歩けなくなったり、寝たきりに近づいたりし、元の生活に戻れなくなってしまう――それがフレイルです。

フレイルは「病名」ではありません。

そして、早く気づけば、進行を止め、改善することができます。

フレイルは、次のような静かな悪循環のなかで進んでいきます。

  1. 動かなくなる
  2. 筋肉が減る
  3. 疲れやすくなる
  4. さらに動かなくなる

この輪を、どこで、誰が、どう止められるのか。そこにこそ、看護の力が必要です。

フレイルの判断には、次の5項目のうち3つ以上が当てはまります。1~2つの場合は「プレフレイル」と呼ばれます。プレフレイルは、“戻れるチャンス”のある時期であり、看護介入が最も効果を発揮するタイミングです。

  1. 歩くのが遅くなった
  2. 握力や脚の力が弱くなった
  3. 体重が自然に減った
  4. すぐ疲れるようになった
  5. 外出や活動が減った

フレイルが進むと、転倒や骨折、ADLの低下、施設入所、せん妄、入院や再入院、さらには死亡のリスクまで高まります。しかも、バイタルサインが大きく変わらないまま、静かに重症化することも少なくありません。

だからこそ、日常生活の変化に気づく「まなざし」が、とても大切なのです。

ぜひ、次の点を意識して観察してください。

歩き方

歩くスピードが遅い、すり足になっている、ふらつく。歩行速度は「第6のバイタルサイン」とも呼ばれます。

動作

椅子から立つのがつらそう、手すりが必要になっている。

生活の変化

外出しなくなった、食事量が減った、「疲れた」が口癖になっていないでしょうか。

看護で特に大切なポイントは、次の3つです。

運動

何よりも大切です。

歩行、下肢筋力、バランスを意識しながら、「一緒に少し歩く」こと。それ自体が立派な看護介入です。

栄養

タンパク質を意識し、食べられているかどうかを丁寧に見てください。

薬への注意

睡眠薬や抗不安薬、ふらつきやすい副作用のある薬はありませんか。

「転ばせない看護」は、フレイル対策そのものです。

フレイルは、「この人が、これからどのように生きていけるのか」を、そっと教えてくれるサインです。

日々のケアの積み重ねが、フレイルの進行を止める医療であり、そして、看護そのものなのです。