
暑さで食欲が落ちる日でも、「揚げなすそうめん」や「スパイス香るカレー」を口にすると、不思議と元気が湧いてきます。食べることは、ただの栄養補給ではなく、生きる喜びそのもの。おいしいひと口が、心をふっと和ませ、幸せを広げてくれます。50歳を過ぎた頃から、私は量より質を大切にするようになりました。少しでいい、美味しいものをじっくり味わいたいのです。
津川友介医師の『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』によれば、科学的に健康効果が認められた食材は5つあります。「魚」「野菜と果物(ジュースを除く)」「玄米や蕎麦、全粒粉パンなど茶色い炭水化物」「オリーブオイル」「ナッツ」。これらは生活習慣病の予防や体の機能維持に役立ちます。
反対に控えたいのは、「赤い肉(牛・豚)や加工肉(ハム、ソーセージ)」「白い炭水化物(白米、白いパン、ラーメン)」「飽和脂肪酸(バター、ラード)」です。加工肉は大腸がんリスクを高め、白い炭水化物は血糖値を急上昇させ、脂肪として蓄積されやすくなります。注意が必要なのは、野菜ジュースやフルーツジュースです。一見ヘルシーに見えますが、これらには食物繊維が少なく、糖分が多いため、むしろ糖尿病のリスクを高める恐れがあります。果物はなるべく「まるごと」食べましょう。リンゴやみかん、バナナなど手軽に食べられる果物を毎日の食事に加えてください。
塩分も忘れてはいけません。日本人は塩分過多で、高血圧の一因となっています。漬物や加工食品、インスタント食品、スナック菓子は塩分が多め。代わりにカリウムを含む野菜や果物を摂ることで、体は余分な塩分を排出しやすくなります。
高齢者ではフレイル予防に十分なたんぱく質摂取が欠かせません。1日3食を基本に、1食につき手のひら1枚分の肉や魚、豆腐を目安にしましょう。そこに軽い運動——早足の散歩やスクワット——を加えることで、身体機能の低下を防げます。甘いものが欲しいときは、カカオ70%以上のダークチョコレートを。適量なら血圧を下げる効果も期待できます。
とはいえ、健康に悪いものを完全に断つ必要はありません。人生は一度きり。時にはステーキを味わったり、私のようにふらりとビッグマックとフライポテトを頬張る日があってもいいのです。食べる喜びは、心の栄養でもあります。
特に余生が限られた超高齢の方には、「好きなものを食べる時間」を大切にしてほしいです。「おいしいね」と言える幸せは、何ものにも代えがたい宝物です。
健康的な食生活は、完璧を目指さなくても大丈夫。「白いご飯を玄米に」「週1回は魚料理を」「甘い飲み物を水やお茶に」——そんな小さな工夫から始めれば十分です。今日の一皿が、未来のあなたをつくります。
食べることは体を養うだけでなく、人生そのものを豊かにする行為です。一口一口を大切に、心ゆくまで味わってください。