御茶ノ水にある山の上ホテルは、昭和29年(1954年)創業の小さなホテルだ。高見順、三島由紀夫、石坂洋次郎、山口瞳、池波正太郎など多くの作家が常宿として愛し、たくさんの名作がここで生まれた。
調度品はかなり使い込まれており、歴史を感じさせる。従業員は言葉少なく誠意があふれ、ほどよい加減を心掛けている。食事もおいしい。作家たちはここで何を考え、どう過ごしたのだろうと古(いにしえ)に思いを馳せる。
創業者である吉田俊男の広告コピーがある。「幾分古びた、くすんだ、ホテルです。静けさと味のお求めに応じる文化人のホテルです」