八ヶ岳の麓にある病院で訪問診療をしている。
認知症の80代男性が誤嚥性肺炎のため亡くなられた。
意識がなくなり動揺する奥さんに「最後まで聴力は保たれているそうです。手や体を触りながら、今までの感謝の気持ちを伝えてあげてください」と伝えた。
勤めていた会社のこと、多くの友人に慕われていたこと、二人で出かけた旅行の思い出を奥さんからナース、ケアマネージャーと一緒に聞いた。手先が器用な方で晩年は帆船作りをされていたそうだ。居間には10隻以上の帆船模型が飾られていた。
認知症がひどくなってからは、奥さんがスーパーで購入したエビが帆船の甲板にのっていたそうだ。家族に見守られながら、幸福そうな旅立ちだった。