人工知能(A I)の発達とともに近未来の医療はどうなっていくのだろう。
エリック・トポル著『Deep Medicine』には、A Iのディープラーニングを用いた医療の変革が描かれている。パターン認識力の向上により、AIは専門医と同等の水準でCT/MRIスキャン画像の読影、病理診断、皮膚科診断を行うことができる。
眼底写真読影による早期の糖尿病網膜症の発見、検診で撮影された胸部レントゲン写真上の小さな肺がんの検出、自殺を精神科医以上の能力で予測することはAIを用いれば可能となる。専門医の仕事は楽になり、へき地においても医療水準を大きく引きあげるであろう。
安価で仕事の早いA I診断は医療経済的にも利点がある。現在の画像読影能力は100万枚以上のスキャン画像を、放射線科医の1万倍近い速度で1枚あたり1ドルの費用で分析する。専門医は仕事がなくなるのではなく、A Iにはできない仕事にシフトすることとなる。放射線科医ならば、血管内治療への進出もその1つであろう。
パターン認識が中心となる診断はAIに任せ、医師は患者の悩みに共感をいだき、データだけに頼らずに患者に直接触れて異常を発見することが重要となるであろう。「昔ながらの優しい医療」がいま見直されようとしている。私たちは知識がなくて診断ができないより、知識はあっても注意を向けないために診断できないことの方が多い。