奥会津(金山町)を流れる只見川は朝夕に川霧が出て幻想的な情景をかもし出します。霧幻峡(むげんきょう)と呼ばれ、霧の中を昔ながらの渡し舟が行きかいます。https://www.mugenkyo.info
当直明けの2年次研修医が私に語りました。「昨夜はまいりました。最初は冗談かと。でも、本当みたいなんです。僕はキツネにつままれたようでした」
48歳女性。22:30頃、突然話が通じなくなりました。「ここはどこ?」と夫に尋ね、自分で作ったおかずを見て、「これ何?」と突然言い出しました。話をしている相手が夫ということは分かっているようです。
既往歴は特になし。定期内服薬はありません。バイタルサインに異常を認めません。救急室でも「ここはどこ?」と何度も質問を繰り返しています。
① キツネの正体は?
② 他に鑑別すべき疾患はありますか
③ 診断と治療はどうしますか
解説)
① 病歴から一過性全健忘(TGA: transient global amnesia)を疑います。TGAという病気を知らないと戸惑うと思います。突然、新たな記憶ができなくなります(前向性健忘)。患者は不安になり何度も同じ質問を繰り返すのが特徴です。
数時間から数年の記憶も喪失します(逆行性健忘)。記憶以外の高次機能に障害はありません。24時間以内に前向性健忘は改善しますが、逆行性健忘により一部の記憶は失われます。発作中の記憶はありません。力むような動作の後に発症することが多いといわれています。原因は不明です。
この患者さんの場合、症状が出現する1.5時間前に夫婦喧嘩をしていたようです。
② てんかん発作、海馬の脳梗塞、頭部外傷後の脳震盪、低血糖、解離性障害が鑑別診断となります。このような症状を繰り返している場合には「てんかん」の可能性があります。頭部MRI、脳波をオーダーします。
③ 典型的な症状と経過から診断します。治療は経過観察です。