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Site icon image八ヶ岳から吹く風 PART 2

八ヶ岳のふもとにある諏訪中央病院で地域医療と若手医師教育を行なっています。医学生や一般の方にもわかりやすく正しい医学情報を発信したいと思います。名古屋の大同病院、会津の福島県立医科大学会津医療センター、郡山の太田西ノ内病院と総合南東北病院でも医学生&研修医教育の機会をいただいています。

オンライン勉強会

病院から車で30分くらいの場所にある、西会津町「さゆりオートパーク」で研修医の先生たちとBBQを楽しみました。

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症例)

生来健康な27歳女性。1ヶ月前から毎日1時間続く、ひどい頭痛を主訴に来院されました。いつも右の頭部に痛みがあるようです。このような頭痛の経験はないそうです。片頭痛の既往はありません。NSAIDs(ロキソニン®)は効かないと訴えています。既往歴は特になく、定期的に服用している薬はありません。

① 鑑別診断は?

② 追加の問診は?

③ 検査はしますか?

解説)

① 何らかの疾患によって起こる頭痛(二次性頭痛)、持続性片側頭痛、副鼻腔炎、群発頭痛

② 頭痛の診察では二次性頭痛の除外が最も大切です。二次性頭痛を疑う症状(red flag sign)には、初めて経験する最悪の頭痛、突然発症の頭痛、今までと異なるパターンの頭痛、意識障害の有無、労作時の頭痛があります。

→「初めて経験する、かなり強い頭痛」とのことでした。二次性頭痛の可能性があります。

片頭痛は頻度の高い疾患なので、光過敏や音過敏、頭痛時の嘔気、日常生活の妨げは確認したいです。

→「光過敏、音過敏、頭痛時の嘔気はないが、頭痛がかなりひどいため眠ることができない」と話されていました。

持続性片側頭痛はインドメタシンが劇的に効きます。

→「インドメタシンは効果がなかった」とのことでした。

副鼻腔炎を疑う鼻閉感、黄色い鼻汁、顔面痛はありませんでした。

群発頭痛を考え、自律神経症状(流涙、鼻汁)の合併、頭痛の持続時間、必ず決まった側の頭痛かを確認したいです。

→「2週間前から、頭痛と同じ右側の目に涙、右鼻孔に鼻水がある。ズキズキするひどい痛みが1時間続く。明け方4:30時や20時頃に、決まって毎日右側の頭痛あり。毎日20-21時の頭痛は目をえぐられる感じ。頭痛時に落ち着きがなくなり歩き回る」とのことでした。

以上の問診から群発頭痛が最も考えられます。群発頭痛は三叉神経・自律神経性頭痛の一つです。キリで眼を突き刺されるような、かなり激しい片側性の頭痛が15分から3時間起こります。頭痛は必ず決まった側で、同じ側に流涙や鼻汁が起こります。かつては男性に特有の疾患と考えられていましたが、最近の研究では男女比は2:1と推定されています。アルコールの摂取で発作が誘発されます。

③ 二次性頭痛も考えられるので、頭部MRI検査は必要です。この症例では頭部MRI検査で異常はありませんでした。

発作時に酸素投与またはスマトリプタンの皮下注を行い、症状は軽快しました。発作の予防としてベラパミルを服用しています。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/yamanaka/201608/547738.html