Site cover image

Site icon image八ヶ岳から吹く風 PART 2

八ヶ岳のふもとにある諏訪中央病院で地域医療と若手医師教育を行なっています。医学生や一般の方にもわかりやすく正しい医学情報を発信したいと思います。名古屋の大同病院、会津の福島県立医科大学会津医療センター、郡山の太田西ノ内病院と総合南東北病院でも医学生&研修医教育の機会をいただいています。

コロナ時代の診療

「マスクなんてつけるな。君の素晴らしい笑顔が見えなくなるじゃないか。視線を患者と同じ高さにして、手を優しく握りしめろ。辛かったですねと心から患者の訴えに共感するんだ」

そんな医療をずっと研修医に教えてきた。しかし「発熱外来」専属医師となり私の診療は大きく変わった。

待合室にいる患者の携帯に電話をかけ病歴を聴取する。診察ではサージカルマスクとアイシールドが欠かせない。2m以内の接触をできるだけ避けるため、バイタルサインも元気そうなら体温と酸素飽和度だけ測定する。肺炎を確かめるため診察することはあるが、肺のラ音を手短に聴取するだけだ。咽頭を観察する行為も、できるだけ避けている。

私がやってきたことと正反対の診療が、コロナ時代の新しい常識となってしまった。数年前にベストセラーとなった『チーズはどこへ消えた?』を読み返した。この新しい変化に適応しなくてはいけない。

この冷たい診察がいつまで続くのかわからないが、必ず感染が収束する時が来る。その時は患者の手を取って脈を確認し、背中にそっと触れながらじっくりと胸部の聴診をして安心感を与えたい。

Image in a image block